Q子供のいない夫婦です。夫が亡くなった場合私が夫の財産をすべて相続できる?
Q:60代の夫婦です。私たちには子供がおりませんが、夫に万一があった場合私が夫名義の財産をすべて相続できますか?お互いの両親はすでに他界しております。なお、夫には3歳下の弟がいます。
A:原則的にはできません。子供のいない夫婦のどちらか一方が亡くなられた場合、亡くなられた方の①配偶者&ご両親や祖父母等の直系尊属②配偶者&兄弟姉妹の順に法定相続人として財産を相続する権利を有します。なお、その際の法定相続割合は①は配偶者2/3、その他1/3 ②は配偶者3/4、兄弟姉妹1/4です。今回は②のケースに該当しますが、注意を要するのは相続時にすでに義弟が亡くなられていた場合、その子供(甥や姪)が代襲相続することとなる点です。したがって、その方たちにもきちんと分割協議書に同意いただかないと相続財産を勝手に処分することは出来ません。もし、そのような事態を避け配偶者に全財産を相続させたいのであれば遺言書の作成(確実性の観点から「公正証書遺言書」がおススメ)が有効です。なぜなら、兄弟姉妹には遺留分がないため、配偶者に自分の全財産を相続させる旨の「遺言書」を遺すことで確実に配偶者に全財産を相続させることができるからです。
Q配偶者が全額相続した場合、1億6千万円までなら税金はかからない?
Q:1億6千万円までの財産なら配偶者が全額相続しても相続税がゼロと聞きましたが本当ですか。私たち夫婦には子供が2人いますが、夫の財産が1億6千万円以内の相続財産であれば、まずは妻の私が全額相続したほうが税金面で有利ですか?
A:夫の財産が1億6千万円以内でそのすべてを妻が相続した場合、配偶者税額軽減特例を申告すればその時点での相続税はゼロですみます。しかしながら、2次相続を考慮すると必ずしも税金面で有利になるとは限りません。実際に試算してみましょう。妻が相続した1億6千万円の財産(他にはないものとします)を妻死亡の2次相続時に手つかずのまま子供2人で相続した場合、子供2人合計の相続税は2,140万円(A)となります。一方、夫の死亡時に法定相続割合通り、妻が1/2、残りを子供2人で均等に相続したとすると相続税は妻はやはり特例適用でゼロ、子供2人合計の相続税は860万円(①)です。そして、妻が相続した1/2の財産8,000万円を妻死亡時子供2人で相続する場合の相続税は2人合わせて470万円(②)、これに1次相続時の相続税860万円(①)と合わせても1,330万円(B)で、1次相続時に妻が全額相続するよりも子供たちにとって大幅に税負担が軽減されることとなります。 ◆二次相続含めた納税額◆ A(妻が一時相続時全額相続)2,140万円>B(妻が一時相続時1/2相続)1,330万円
*配偶者の税額軽減特例とは…『配偶者が遺産総額の法定相続分または1億6千万円のいずれか多い額を相続しても配偶者には相続税が課されない』
☛1989年に亡くなられた松下幸之助氏の遺産総額2,449億円は日本史上最高と言われ、妻がその1/2の1,224億円を無税で相続しています。
Q借金のカタに生命保険金は取られてしまう?
Q:自営業の夫が事業上の借金を残したまま事故で亡くなりました。唯一夫が残してくれた財産が3,000万円の私を受取人とした生命保険なのですが、これを借金の返済に充てるとほとんど残りません。できれば今後の生活費や子供の教育費のために残しておきたいのですが、やはり虫が良すぎるでしょうか?
A:大丈夫です、借金返済に充てることなく生命保険金全額を受け取ることが可能です。民法上、生命保険金は受取人固有の財産であり、相続財産ではありません(分割協議の対象外です)。そのためには、まずは、相続を知った日から3ケ月以内に相続人全員で被相続人の住所を管轄する家庭裁判所に「相続の放棄」の申述書を提出し、受理されることが必要です。それをしないと、負の借金も相続することとなり結果的に受け取った生命保険金で返済することにもなりかねません。なお、相続を知ってから3ケ月を過ぎてしまいますと相続放棄そのものができなくなりますので、日頃から事業の借入金等のお金に関する情報については夫婦間でお互いに共有しておくことが大変重要です。また、少額でも被相続人の預金を引き出したりすると、「相続の放棄」そのものが認められなくなることにもなりますので十分注意が必要です。
Q3年前に今の夫と結婚、夫は再婚で前妻を親権者とした子供がいるが、その子は夫の相続人?
Q:3年前に今の夫と結婚しました。私は初婚ですが、夫は再婚で前妻との間に子供がいます。子供の親権者は前妻で現在一緒に暮らしているようです。昨年、夫は会社の健康診断でガンが見つかり、現在治療を受けています。もし、夫に万一があった場合前妻との子供も相続人になりますか?
A:ご本人の子供であれば、民法上相続第1順位の法定相続人となります。また、本問のように子供が未成年の場合に親の死亡に伴う相続が発生すると、その子供に代わり(一般的に)その子供の親権者が相続の分割協議に加わることとなります。もちろん、法定相続割合も通常と変わりませんので、仮にあなたと夫との間に子がいない場合には、あなたと前妻との子供、それぞれが相続財産の1/2を相続する権利を有することとなります。不動産の財産も同様ですので夫名義の持家等にお住まいであれば注意が必要です。
Q母が亡くなった後、母に前夫との間に子供がいることが判明、どうしたらよい?
Q:母が90歳で亡くなりました、相続の手続きの関係で母の戸籍抄本を取ったところ、父とは再婚して私を出産、前夫との間にも子供がいることが判明しました。父はすでに他界していて、今までそのような話を両親から全く聞かされておらず正に晴天の霹靂でした。この場合、相続手続きをどのように進めればよいでしょうか?
A:前問同様、被相続人の子である以上相続人となりますので、相続人間で分割協議をする必要があります。ですので、まずはその義兄弟の居住地を調べた上で連絡をとり、母が逝去された事実をお伝えし、今後の相続手続きに関する話し合いの場を持つことが第一歩となります。その過程で、お母様の相続財産についても開示し、どのように配分するのかご兄弟でよく話し合われるのがよろしいのではないでしょうか。
Q今すぐにできる相続税対策はありますか。
Q:父は学校卒業後、大手企業の会社員として30年、その後その会社の役員として10年ほど勤め退職しました。役員就任時に社員としての退職金、そして役員退任時に役員退職慰労金として2回の退職金を受給していてそれなりの資産を持っています。現在、父も年齢が70代後半に差し掛かり、もし父に万一があれば子供である私たちも相続税の支払は免れないものと覚悟しています。現実的で即効性ある相続税対策はありませんか?
A:まだ活用していなければ、生命保険への加入をお勧めします。というのも、相続税法上、生命保険金はみなし相続財産として「法定相続人数×500万円」が非課税扱いされることとなっています。仮に、子供2人と配偶者で相続する場合、「3人×500万円=1,500万円」の保険金が非課税となるものです。つまり、全く課税されずに丸々手にできる相続財産となります。契約形態は、契約者、被保険者とも父、死亡保険金受取人を法定相続人のどなたかとします。なお、受取人は1人で1500万円受け取っても、あるいは3人でそれぞれ500万ずつ受け取ってもかまいません。ただし、二次相続を考慮されるのであれば配偶者ではなく子供を受取人にされるのも有効です。もし、まとまったお金(預貯金等)があるのであれば、一時払での生命保険加入を検討されてはいかがでしょうか。お金を移動するだけですぐに非課税枠の効果が期待できます。
Q相続対策には借金をして財産と相殺すると良いというのは本当?
Q:相続対策として、借金をして負債を増やすと財産と相殺できてよいと聞きましたが、本当ですか?
A:負の相続財産として借金は財産と相殺はできますが、その借金が別の資産となっていれば必ずしも対策になるとは言えません。例えば、銀行から借金してそのお金がそのまま銀行預金されていれば、プラスマイナスゼロで何ら対策にはなっていません(借入の金利分だけマイナスになるだけです)。昔からよくある相続対策の一つで、借入金を原資にアパートを建て節税するという手法は不動産に投資することで財産の評価減を図るというものですが、それ自体の相続評価の減少が図れたとしても、立地や周辺の物件状況等アパートそのものの入居率や賃料収入の不確実性等から最近ではその効果に疑問符がつくケースも少なくありません。つまり、実際にやってみないと効果が分からないというのが真実のようです。でも、実際にやってみて想定外の低い入居率だったりすると借入金の返済そのものにも窮することとなり、結果手持ちの別の財産を処分するなどとなると一体何のための相続対策なのかわからなくなりますよね。慎重の上にも慎重なる事前の検討が求められる手法でもあります。
Q2023年4月の税制改正で、暦年贈与はやっぱりやった方がいいの?
Q:2023年4月に相続対策としての暦年贈与の取扱い変更についてセミナーで話を聞きましたが、今から実行して効果があるものでしょうか?また、毎年継続的に贈与をすると、暦年贈与ではなく過去の贈与分も一括して贈与したことになり、多額の贈与税がかかるとも聞きましたが…
A:この4月の改正において、贈与の取扱いについては65年ぶりに大きく変更されました。暦年贈与は年間110万円までは非課税で財産を移転させることができることから、相続対策として利用する方も数多くいらっしゃいました。従来の暦年贈与は相続開始前3年以内について相続財産に含めるいわゆる「持ち戻し」がありましたが、今回の改正では相続開始前7年以内まで延長され、全般的にみてより贈与での相続対策は厳しくなりました。ただし、完全移行は2031年1月1日からであり、それまでは経過措置が適用されます。ちなみに2026年12月31日までに相続があった場合は改正前の「3年ルール」が適用されます。また、暦年贈与を否認されるケースとしては、贈与契約書の作成がない、毎年同じ額を同じ時期に贈与するといった場合等にその可能性が高くなる恐れがありますので、しっかりとした準備が必要です。いずれにしても暦年贈与の実行については、メリットデメリット双方を総合的に分析、判断されることが求められます。ちなみに、暦年贈与については「持ち戻し」の対象外となる一代飛ばし(子ではなく孫への贈与)を検討することもお勧めです。なお、相続時精算課税制度においても本改正で年間110万円の基礎控除が認められることとなり、総合的な視点から自身にとってより有利な選択を判断されることが求められます。
Q贈与にならない保険のプレゼントプランって何のこと?
Q:今年、長男の子(孫)が小学校に進学します。孫の誕生以降、ずっと将来のためにと孫名義で貯金をしていますが、先日知人から贈与契約書がなければそれは名義預金といって、あくまでも私のお金にすぎないと言われました。その知人は孫に正式に現金を贈与するとなると手続きも面倒だし、大きくなってそのお金を頼りにして浪費癖がついてしまうのも困るので、現金での贈与ではなく保険をかけてあげて将来の孫のためにプレゼントする準備をしたとのことでした。知人は「プレゼントプランといって、贈与にも該当しないのがいい」といってましたが、どのようなプランなのですか?
A:一般的な「孫への保険のプレゼントプラン」は、契約者が祖父母、被保険者を孫にして、終身保障のガン保険や医療保険に加入するものです。ポイントは保険証券には、必ず契約者、被保険者両方の名前が記載されるので、将来孫が大きくなった時に祖父母が自分のために保険料を払ってかけてくれたものとの思いがずっと心に残る、まさに思い出深いプランになるという点です。払方は、通常は一括払(一時払や全期前納払)で、孫の保険料負担はなく一生涯の保障を祖父母からプレゼントするというものです(保障内容等にもよりますが、保険料も100万円~200万円程度が多い)。保障が一生涯ということは、例えばがん保険であれば孫ががんに罹患した場合年齢に関わらず、いつでもガン保障を得ることができ(非課税)、経済的にも大変助かることになるはずですし、その時は契約者である祖父母の顔を思い出し感謝することでしょう。このプラン、契約者は祖父母ですので贈与に該当することはありません。ただし、将来祖父母である契約者が亡くなられると、当該契約は相続財産とされ、その時の解約返戻金相当額で財産評価されることとなります。現金の贈与だけでなく、真に孫のためにと考えるとこうした保険のプレゼントプランも良いのではないでしょうか。