子供のいない夫婦、配偶者が財産のすべてを相続できるわけではない!?
子供のいないご夫婦で、どちらかに万一があった場合、民法上残された配偶者が財産を全額相続できるわけではありません。例えば、ご両親がすでに他界していれば亡くなられた方(被相続人)の兄弟姉妹も相続する権利を有します。そして、その兄弟姉妹もすでに亡くなられていると、その子供たち(被相続人の甥、姪)が代襲相続することとなり、仮にその中の一人が海外在住ともなれば相続する際に必要となる分割協議に大変な時間と労力等を費やすこととなり、結果相続財産の引き出しにも相当の時間を要することにもなりかねません。(被相続人の財産を相続するには分割協議は必須です)これを防ぐためには、ズバリ「遺言」がおススメです。というのも、兄弟姉妹には遺留分がないため、遺言で配偶者へ自身の財産を全額相続させる旨の意思表示を行うことで、その通りに実現することが可能なのです。なお、遺言書には大きく分けて「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類がありますが、よく利用されるのが「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」です。前者については令和2年7月から、法務局が遺言書の原本を保管してくれる制度(遺言書保管制度)が導入され、従来のデメリットであった自宅保管による遺言書の紛失、相続人などによる遺言書の隠匿や変造、破棄等の懸念を解消することができることに加え、証人不要、費用もお手頃などメリットも多く、特に子供のいないご家庭では今後利用されるケースが増えるものと予想されます。
団体信用生命保険だけでは持ち家を守れない!?
住宅ローンを利用されている方は、金融機関にて万一の際に債務が免除される「団体信用生命保険(以下団信)」に加入されていますが、これで大黒柱に万一があっても持ち家は安心!とは言えません。もちろん、死亡や重度の障害状態に該当すれば今後住宅ローンの返済は不要でしょう。しかし、死亡ではなく事故や病気で働けなくなった時はどうでしょうか。この場合、特約なし団信は支払要件に該当せずローン支払いも待ったなし、生活費も従来と同じくかかる上に治療費の支出も覚悟しなければなりません。一方、収入は失業となれば最悪ゼロに、また頼りの綱である健康保険の傷病手当も最長1年半までの支給です。とても、ローンを支払ってかつ従来の生活を続けるには無理が出てきます。最終的には夢のマイホームを手放さざるを得ない事態も想定されます。このように、住宅ローン利用の最大のリスクは死亡した時よりむしろ、就業できなくなった時であることを認識すべきでしょう。最近ではそうしたリスクに備えた保険商品もいろいろと販売されているので、自身に合った保障を検討してみては。もちろん、団信にも金利上乗せタイプで3大疾病や就業不能時に備えた特約保障もあり、あわせて比較検討されてはいかがでしょうか。
特別養護老人ホームに入所する際、現預金を500万円超持っていると損!?
老後、体が思うように動かなくなったら割安な「特養」に入所したいと考えている方いらっしゃいませんか?特養は公的介護施設の一つで入居一時金も不要、月額費用も割安なため人気のある施設です。また、保有資産が一定額以内であれば負担限度額認定を受けることで住居費や食費の負担費用の減免措置があるのも大きな魅力です。しかし、この認定を受けるための資産要件が2021年8月に改定され、新たに単身者で500万円、夫婦で1,500万円以下等の要件が加わりました。資産とは入所者の現預金、株式や国債等の有価証券、金や銀等の貴金属、投信の合計金額です。一方、不動産や生命保険契約は対象外です。借金等負債があれば資産から控除されます。この改定で年金収入等120万円超、預貯金800万円の入居者は第3段階から第4段階になり、従来の月間の負担額が9.8万円から一気に16万円にアップ、やむなく差額分を預貯金から取り崩す例もあります。この事例から現預金を基準以上に所有している方は、現預金を一時払の生命保険等に移転すること等が対策の一つになります。ただし、この認定の前提として本人、配偶者及び同一世帯全員が住民税非課税であることが必須要件です。
入院と退院は同月内がおトク!?(高額療養費制度)
我が国の健康保険における高額療養費制度(高額な医療費負担に一定の上限を設ける制度)では暦月方式(1日から末日まで)を採用しています。そのため、同一月内で入退院をした場合と月をまたいで入退院をした場合とでは同じ治療内容でも患者の自己負担額が異なってきます。例えば、1月に病気で入院し治療後同月内に退院、窓口で保険適用分として30万円を支払った場合の自己負担上限は「69歳以下(区分エ)」として57,600円であるため、差額の242,400円が高額療養費として還付されます。一方、1月に入院開始し治療を終えて2月に退院、その際の治療費が1月と2月それぞれ15万円(合計同じ30万円)だった場合、1月、2月それぞれの自己負担上限が57,600円となり計115,200円が自己負担額の合計(還付額は184,800円)となり、同月内の場合と比べ2倍の金額を支払わなければなりません。したがって、もし入院するならできるだけ同月内の入退院が経済的負担の点で考えると望ましいと言えます。可能なら、事前に主治医に確認してみるのも一考ですね。